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糖尿病

GLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体作動薬の使い方

GLP-1受容体作動薬の使い方

GLP-1受容体作動薬の使い方

インクレチン関連薬の一つとして最近注目されているGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体作動薬(以下GLP-1RA)は、血糖依存性にインスリン分泌を促進し、かつグルカゴン分泌も抑制することにより、血糖降下作用を発揮します。

単独では低血糖を起こしにくく、体重減少降下も期待できるため、インスリン分泌能が保たれている肥満2型糖尿病患者では有用な選択薬の一つとなっています。

海外では2005年からエキセナチド(バイエッタ)が最初に使用可能となり、日本では2010年からリラグルチド(ビクトーザ)が最初に使用可能となりました。

2013年には、基礎インスリンと併用可能なリキシセナチド(リキスミア)が発売されました。また、週1回投与の製剤も2012年にエキセナチドLAR(ビデュリオン)が、2015年にはデュラグルチド(トルリシティ)が発売され、日本では現在5種類の製剤が使用可能です。

GLP-1RAの特徴

GLP-1RAは通常は短時間作用型と長時間作用型に分けて考えると理解しやすいでしょう、両者で若干異なるのでその特徴を説明します。
短時間作用型は食後血糖の降下作用が強く、体重減少も強いのですが、消化器症状(悪心等)の副作用も強く、一方、長時間作用型は空腹時血糖の降下作用が強く、体重減少は弱い、消化器症状は比較的少ない、という特徴があります。1)

2015年のADA(米国糖尿病協会)とEASD(欧州糖尿病学会)による合同ステイトメントでは、GLP-1RAはメトホルミンに続く第2選択薬の一つとして位置づけられ、また持効型インスリンと本剤の併用療法は、BOT(持効型インスリンと経口血糖降下薬の併用療法)の次のステップとして、Basal-Bolus Therapyと同列に位置づけられています。2)

ただしGLP-1RAは高価ですので、特にインスリンと併用する場合は、患者の経済的な負担にも十分配慮することが必要です。
また、発売開始後まだ10年であり、長期的な安全性については今後も注意が必要です。

エビデンス

2014年、基礎インスリンとGLP-1RAの併用と、基礎インスリンと3回の追加インスリン(Basal-Bolus Therapy)を比較したメタアナリシスの結果が報告されました。基礎インスリンとGLP-1RAの併用のほうが、有意に低血糖リスクの低下(−33%)や体重減少(−5.7kg)を示した上に、HbA1c低下(−0.1%)も有意でした。3)

また、BOTで血糖コントロールが不良な平均BMI 32の肥満2型糖尿病約900例を、グラルギン(ランタス)にリキシセナチド(リキスミア)追加群、グラルギン(ランタス)にグルリジン(アピドラ)1回注射追加(Basal-Plus)群、Basal-Bolus群の3群にランダム化し、24週間直接比較した多施設共同研究では、同程度に血糖コントロールがされましたが、基礎インスリンとGLP-1RAの併用群では低血糖が有意に少なく、体重増加も無いという結果でした。

基礎インスリンとGLP-1RAの併用群では、副作用として消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)が有意に多かったのですが、この点さえ問題なければ、BOTの次のステップとしては基礎インスリンとGLP-1RAの併用療法を先に選択すべきである、と述べています。4)

最も重要な心血管イベント抑制に関しては、リキシセナチド(リキスミア)はELIXA試験5)では非劣性を示しました。
リラグルチド(ビクトーザ)はLEADER試験6)で、GLP-1RAとしては初めて優位性を示しました、ただしビクトーザは日本では保険適用外の1日1.8mg(日本では1日0.9mgまでしか使用できません)での試験結果であることに注意が必要です。

また2016年9月には、週1回製剤のSemaglutide(日本未発売)でも、心血管イベントがプラセボと比べ有意に低下したことが報告されました。7)

GLP1-RAの2製剤が心血管イベント抑制で優位性を示したことからも、今後、肥満2型糖尿病でかつインスリン分泌能が保たれている場合は、GLP1-RAがBOTの前に検討すべき治療法になると思われます。

GLP-1RAの使用上の注意・副作用

GLP-1RAはインスリン製剤の代わりになるものではありません。
インスリンからの切り替えによって糖尿病ケトアシドーシスを起こした症例が報告されており、インスリン使用中の患者では血中Cペプチド(CPR)を測定し、インスリン依存状態でないことを確認してから、本剤の使用を判断する必要があります。
Usuiらは165例のリラグルチド(ビクトーザ)使用例で検討した結果、グルカゴン負荷試験におけるΔCPR(Cペプチドの変化量)を有効な指標として報告しており1.34mg/mLをカットオフ値としています。またCPI(C-peptide index : 空腹時Cペプチド÷空腹時血糖×100)についても検討しておりカットオフ値は0.93としています。8)

またGLP1-RAは、SU薬との併用で重篤な低血糖を生じるリスクがあるため、SU薬と併用する際にはSU薬を減量する必要があります。副作用としては、悪心・便秘・下痢などの消化器症状がみられます。また、膵炎の既往がある患者では使用すべきではありません。胆石症の増加も報告されています。

GLP-1RA各デバイスおよび各製剤の比較

デュラグルチド(トルリシティ)

1週間に1回投与で、リラグルチド(ビクトーザ)1.8mg連日投与と同等の血糖降下作用を有し、デバイス操作も非常に簡単なデュラグルチド(トルリシティ)が2016年9月から長期処方が可能となり、今後もっとも使用されるようになると思われます。本剤は、自己注射ができない高齢者など在宅医療でも有用です。デュラグルチド(トルリシティ)のデバイスは1回使い切りの自動注入タイプの注入器で、注射針はあらかじめ注入器に取り付けられているので、患者はキットの先端を腹壁などの刺入部位に当てて注入ボタンを押すだけで自動的に注射針が皮下に刺入でき、必要な1回分の薬液が注入される仕組みになっています。使用する際の薬液溶解や用量設定、注射針装着といった作業を必要とせず、また注射針は注入後自動的に注入器内に収納されるため、患者は終始注射針を見ずに自己注射を実施できるという利点があります。デュラグルチド(トルリシティ)は、単独でも、またインスリンを含むすべての血糖降下薬との併用でも使用可能です。

エキセナチドLAR(ビデュリオン)

発売が先行した週1回製剤のエキセナチドLAR(ビデュリオン)は、使い切りのキットですが、使用時に溶解し十分な混和作業が必要で、専用針の装着も必要なため、利便性ではデュラグルチド(トルリシティ)に劣っています。また、注射部位に硬結が生じることがあるため、注射部位のローテーションが必要です。ビデュリオンは、SU薬、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬のいずれかとの併用が必要です。

リラグルチド(ビクトーザ)

1日1〜2回注射の製剤では、単独使用でも、またすべての経口血糖降下薬およびすべてのインスリン製剤とも併用可能なリラグルチド(ビクトーザ)がもっとも使用されていますが、日本での使用可能量は、欧米での通常使用量1日1.8mgの半分の0.9mgまでであり、血糖降下作用・体重減少降下が弱いことが欠点です。日本でも現在1.8mgで治験中であり、早期の適応拡大が期待されています。

エキセナチド(バイエッタ)、リキシセナチド(リキスミア)

エキセナチド(バイエッタ)は単独使用が不可で、SU薬(ビグアナイド薬またはチアゾリジン薬との併用を含む)を使用しても効果が不十分な場合に使用可能です。リキシセナチド(リキスミア)も単独使用が不可で、SU薬(またはビグアナイド薬またはチアゾリジン薬)を使用しても効果が不十分な場合、および持効型または中間型インスリンとの併用が可能です。(超速効型・速効型インスリンとの併用は不可)この2剤は保険適用上の使用制限があることが欠点です。ただし、これは薬理学的な問題ではなく、日本で治験がされていないことによります。また副作用の消化器症状が強いことも欠点です。ただし体重減少効果は強いため、高度肥満患者ではあえてこの2剤を使用する場合もあります。

1日1回〜2回注射のデバイスは、リラグルチド(ビクトーザ)は同一メーカーのインスリン製剤用のフレックスペンと同じで、リキシセナチド(リキスミア)も同一メーカーのソロスターと同じです。

また、エキセナチド(バイエッタ)は通常の1回使用量である5μgタイプと10μgタイプの2種類のデバイスが用意されています。このデバイスはインスリン・メーカーとは異なる他社製品です。

これらの製剤では注射針もインスリン製剤と同じ針を使用します。

エキセナチド(バイエッタ)を除くこれらの製剤は、インスリン製剤と同じデバイスであり、デバイスに対する信頼性は高いと言えます。

5種類の製剤を比較検討しましたが、筆者は、プライマリ・ケア医が用意すべき製剤としては、1週間に1回の製剤からは単独でもまたどの製剤との併用も可能でかつデバイスの操作も簡便なトルリシティ、1日1〜2回の製剤からは単独でもまたどの薬剤との併用も可能なビクトーザ、この2種類を推薦します。

文献

1) Nat Rev Endocrinol. 2012 Dec;8(12):728-42. doi: 10.1038/nrendo.2012.140. Epub 2012 Sep 4.
GLP-1 receptor agonists for individualized treatment of type 2 diabetes mellitus.
Meier JJ

2 ) Diabetes Care. 2015 Jan;38(1):140-9. doi: 10.2337/dc14-2441.
Management of hyperglycemia in type 2 diabetes, 2015: a patient-centered approach: update to a position statement of the American Diabetes Association and the European Association for the Study of Diabetes.
Inzucchi SE et al;

3) Lancet. 2014 Dec 20;384(9961):2228-34. doi: 10.1016/S0140-6736(14)61335-0. Epub 2014 Sep 11.
Glucagon-like peptide-1 receptor agonist and basal insulin combination treatment for the management of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis.
Eng C et al;

4) Prandial Options to Advance Basal Insulin Glargine Therapy: Testing Lixisenatide Plus Basal Insulin Versus Insulin Glulisine Either as Basal-Plus or Basal-Bolus in Type 2 Diabetes: The GetGoal Duo-2 Trial
Julio Rosenstock et al ;
Diabetes Care 2016 Aug; 39 (8): 1318-1328.

5) N Engl J Med. 2015 Dec 3;373(23):2247-57. doi: 10.1056/NEJMoa1509225.
Lixisenatide in Patients with Type 2 Diabetes and Acute Coronary Syndrome.
Pfeffer MA, et al;

6) N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):311-22. doi: 10.1056/NEJMoa1603827. Epub 2016 Jun 13.
Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.
Marso SP, et al;

7) Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes
Steven P. Marso, M.D. et al
September 16, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1607141

8) J Diabetes Complications. 2015 Nov-Dec;29(8):1203-10. doi: 10.1016/j.jdiacomp.2015.07.020. Epub 2015 Jul 21.
Retrospective analysis of safety and efficacy of liraglutide monotherapy and sulfonylurea-combination therapy in Japanese type 2 diabetes: Association of remaining β-cell function and achievement of HbA1c target one year after initiation.
Usui R et al

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